
井ノ上流焙煎の詳しい話
焙煎の話
皆さんおはようございます。
今日は福袋に入っているエルサルバドルの「サン・ニコラス農園(ゲイシャ:ナチュラルアナエロビック)」の焙煎の話を少し詳しくします。
(ちなみにこちらはヴォアラ珈琲で単独落札していますので、世界中で飲めるのはヴォアラ珈琲だけです。)

焙煎は環境整備から
「焙煎は環境整備から」を合言葉に、焙煎機もドイツ製のプロバットから、アメリカ製のスマートロースターを選択しました。

普段と変わらず焙煎の段取りをとってますが、環境を整えるために秘密の通路が焙煎中だけ解放されます。
スイッチを押すとシャッターが開きます。それにより焙煎室がマイナス圧にならないように工夫してます。

焙煎は常に新鮮な空気を取り入れて、スマートの場合は循環させては居るけど、煙突から余計なモノをはきだし熱風だけは循環します。
そして冷却の時も排気してるので、ストレスのないバランスを取るには、正圧にするのが再現性がありストレスがないです。
そして室内も常に風のこない冷暖房をつけて、室温の大きな変化を抑えてます。常に19℃~21℃に設定。
またうっかりシャッターを開放し忘れた時のために、倉庫との連携のドアが、マイナス圧の時は開けても閉まらない様にしてます。

プロパンガスを使用してるのですが、霧島市はKセラ工場とSニー工場があるので、ガス事業者に良い技術者がいます。
日本ガスさんの技術者と打ち合わせして、外気温などの変化でも安定供給出来るように様々な工夫をしています。
いよいよ焙煎
焙煎機の暖気も予定投入温度より高い温度帯と実際の投入温度を行ったり来たり4~5回繰り返したりして、30~60分かけて丁寧に行います。
特別な豆は1バッチ目ではなく、釜の中が安定して部分的な熱だまりのない2バッチ目から行います。
実はすでに投入温度も焼き上がりの温度もその時にはほとんど決めています。

設計図なしで、建物が建たないのと一緒で、意図しないアクシデントの時に「どうするか?」だけですが、それが、出来るのも多くの失敗の積み重ねと常に「もっと美味しく」をテーマに焙煎後にカッピングで確認してるからです。
投入温度まで達したら自動で豆が投入されます。すると温度が下がります。これは生豆が焙煎室と同じ温度だからです。
そこにもノウハウがあり、生豆を保管するコンテナ倉庫のは一年中19℃設定にしてます。そして焙煎前に焙煎機の横に持って来ます。
昔は投入温度後の1分前後で結果がわかると思っていました。それぐらい大事な事です。
経験を積み重ねると段々とそれも当たり前になって来ます。

そして次の目標の温度を目指して段々とカロリーを与えていきます。
カラーチェンジとかゴールデンカラーもいつも通りに、いつもの時間と温度で過ぎて行き、淡々と焙煎が進んでいきます。
「淡々と」というところがポイントです。
これも環境整備と焙煎機のメンテナンスと必要箇所の掃除をキチンとしてるからだと思います。
そして、すでに焼き上がりのイメージが出来てるので、そこに向かってゆっくりと予定の長さの滑走路を降りて来て着地します。

そして冷却温度と時間をチェックして、焼き上がった豆に軽くタッチして温度確認してクーラーを止めます。
このノウハウは、 2004年に行われたロースターズギルドでチーム優勝した時に、海外のロースター達とのジェスチャーを交えたディスカッションで学びました。

焼き上がった後も焙煎は進んでいく
焼き上がった後も焙煎は進んでいくので、室温より少し高い温度まで冷却してディストーナー(石抜き機械)で吸い上げます。
今度は豆がゆっくり室温へ下がっていきます。

実は、焙煎は焼き上がったら完成では無く、数日間は焙煎は進んでいくみたいです。
目に見えないので曖昧ですが、研究資料で教えてもらった記憶があります。
なので出来るだけ、ストレスを与えないように変化を緩やかにでもメリハリをつけて行ってます。
スマートロースターは、今現在の1分後の温度変化数値が3秒ごとに表示されます。
今では、様々なアプリも開発されて様々な焙煎機にも取り付けられるようになってますが、肝心な温度計も熱電対のセンサーの直径の細さと正確性、反応の速さがよく出来てるのです。
スペシャルティコーヒーになってからそれまでの温度計の計測する位置が、大きく変わったのも、より再現性をテーマに出来る素材のクオリティのおかけです。
コーヒー豆に直接触れる位置に温度計が付きました。
プロバット時代
昔、プロバットを使ってる時も、豆の吐き出し口を透明の板に交換して、豆が一番集まってる所に、温度計の位置決めをして取り付けてました。
ざっくり書きますが、焙煎機の構造も薪ストーブの様な構造で、周りの空気を燃焼させてドラムを通って、排気ファンの力も借りて外に排出していました。
常に気圧配置とか季節や様々な事に影響を受けてました。
焙煎機のチャフ(外皮)の付着で、排気が変わったり、プロバットL5kgの時は、40バッチほどで味に影響がありその度に掃除、プロバットUG22の時は、その手間を省くために、特別にサイクロンを水冷式にしておまけに煙突もテッペンにシャワーを付けて焙煎が終わるとコックを開いて洗浄してました。
当時は煙突もシングル煙突でした。
スマートロースターになってからは二重煙突を真っ直ぐ屋根を貫通して建ててます。

煙突の費用でカッコいい車が買えるほど…
変わらない環境でコーヒー焙煎するために、様々な改善を行なって来ましたが、これもひとえに私が美味しいコーヒーを飲みたいからです….
今日もよい1日をお過ごしください。