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tatsuya inoue

一杯のコーヒーは、まず真っ白な花から始まります。

「収穫よりも前から始まる、コーヒーづくり。」

コーヒーというと、焙煎された茶色い豆を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ですが、その品質の始まりは、真っ白な花にあります。

コーヒーの木は、十分な雨を受けたあと、一斉に白い花を咲かせます。
ジャスミンのような甘い香りを放つその花は、とても美しく、そしてその年の収穫を左右する大切な存在です。

花がしっかり咲き、受粉がうまくいくことで実がつき、ゆっくりと成熟して「コーヒーチェリー」になります。

つまり、私たちが飲む一杯の品質づくりは、収穫や精製よりもっと前、“開花”の段階から始まっているのです。

雨が少なすぎても、多すぎても開花には影響が出ます。
だから生産者は、毎年自然と向き合いながら栽培しています。

そして、その実が完熟すると赤や黄色へと色づいていきます。

「コーヒーチェリー」という名前から、さくらんぼのような果肉たっぷりの果物を想像される方も多いかもしれません。

ですが、実際に食べてみると少し驚きます。

完熟したチェリーは確かに甘いです。
でも、思ったより果肉は少なく、感覚としては“甘い皮をかじる”ような感じに近いかもしれません。

なぜなら、コーヒーの実は果肉を楽しむためではなく、中心にある種子——つまりコーヒー豆を育てるための実だからです。

それでも、そのわずかな果肉の糖分や栄養が、豆の味わいに大きく関わっています。

だからこそ、生産者は完熟した実だけを見極めながら収穫しようとします。

未熟な実は、青っぽさや渋みにつながりやすい。

一方、完熟した実は、甘さや複雑さ、そしてクリーンな味わいにつながっていきます。

最近では、近くのホームセンターなどでもコーヒーの木を見かけることがあります。

実際に、お客様の中にも、ご自宅で花を咲かせ、コーヒーの実をつけられた方もいらっしゃいます。

もし実がなったら、ぜひ勇気を持って“完熟した実”を食べてみてください。

「これが、あのコーヒーの始まりなんだ。」そんな小さな感動があると思います。

普段飲んでいる一杯のコーヒーも、もともとは、数日だけ咲く白い花と、小さな果実から始まっています。

今日のコーヒーを飲むとき、少しだけその景色を思い浮かべていただけたら嬉しいです。

今日も良い1日をお過ごしください。

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